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概要

70年の航跡

一隻の船ができあがるまでContract契約船主が造船所に船を注文するにあたって、建造請負契約を結ぶための調印式(signing ceremony)を行う。双方の代表が出席して、建造請負契約書に調印(パナマ会社の場合は署名)。この契約発生から船の完成引き渡しまでに、通常で3~4年、短くても1年、長い場合は5年ぐらいかかる船もある。1隻の船ができあがるまでには、多大な時間と技術、労力が費やされるのである。Keel laying起工造作開始の日、造船所にて工事中の安全を祈願する祈願祭の神事が執り行われる。この際、工場内で溶接ボタンを押して火花を飛ばすセレモニーが行われるのがならわしとなっている。家の建築でいうと、地鎮祭にあたるものである。ちなみに船はいくつかのブロックに分けて建造され、最後にそれらを組み立てて一隻に仕上げる。Launching進水ブロック別に建造されてきたものが組み上げられ、船の形ができあがったところで、いよいよそれを水に浮かせる儀式、進水式が行われる。船の建造工程の中では最も大きな儀式で、家の建築では棟上げにあたるもの。軍艦マーチが高らかに鳴り響く中、船をつなぎ止める紅白の綱が進水斧で切断さしこうれ(支綱切断)、ゆっくりと海の中に滑り降りて、鉄の塊の船がはじめて水の上に浮かぶ。何度経験しても、ジーンと胸が熱くなる感動的な瞬間である。ちなみに支綱切断は必ず女性が行うのがしきたりとなっている。英語では船(ship)は女性名詞。船を陸とつないでいる綱は、母親と子どもを結ぶへその緒を意味するともいわれる。昔の船はすべて陸上の工場内で建造されたが、最近はドックの中で造られるものも多く、その場合はドック内に注水して船を浮かべる。進水式の際に船の命名が行われる場合もある。38